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研究最前線(2011年1月掲載)

地震災害に強い社会を目指して

理事/教授 杉戸真太(地震工学・都市防災)
教授 能島暢呂(地震工学・都市防災)
助教 久世益充(地震工学)
地震工学研究室

研究概要

 地震工学研究室では,地震災害を防止・軽減するために,1:地域の地震発生の特徴の把握(地震危険度評価)、2:複雑な地盤の揺れの推定(強震動予測),3:発生直後の地域の様々な被害の推定(直接被害予測)、さらには、4:復旧活動や経済的被害などの長期にわたる被害の推定(長期影響評価)まで,幅広い分野に及ぶ総合的な研究を行っています.とくに、東海地方では,東海地震,東南海地震と呼ばれる,海溝型巨大地震の発生が危惧されており,その対策は急務であると言えます.上記の4つの分野の研究成果を活用した事例などについて紹介します.

海溝型巨大地震の地震動予測

 将来発生する東海地震や東南海地震では,どのような揺れになるのでしょうか?右の図は,東南海地震・東海地震が連動して発生した場合(1854年に発生した安政東海地震のタイプ)を想定した震度の予測結果です.研究室で開発された地震動予測法と,中部地域(岐阜,愛知,三重,静岡,長野,山梨)の表層地盤データを用いて,広い地域の震度の拡がりを予測することができます.

地域地震防災のための,防災マップの作成

 それでは,予想される地震の揺れにより,地域の被害はどの程度になるでしょうか?県や市町村では,地震の揺れや被害を予測し,防災マップが作成されています.地震工学研究室でも,岐阜県や岐阜市など,複数の自治体が実施した地震被害想定調査に関わっております.
 右の図は,岐阜市で作成された防災マップです.揺れや被害の予測結果や避難所,病院などを記載した防災マップを,自主防災組織(市内50地区)ごとに作成し,岐阜市全戸に配布されました.

予想震度・液状化危険度検索システムの公開

http://www1.gifu-u.ac.jp/~eerl/kensaku/index.html

 地震工学研究室では,各地の震度予測結果をより身近な情報として知っていただけるよう,住所や郵便番号で予測震度・液状化危険度を検索できるシステムを公開しています.東海地震や東南海地震などの海溝型地震の予測結果に加えて,岐阜県内では内陸地震による予測結果も検索することができます.

観測施設の紹介

 地震動は地表付近の地盤の影響により,揺れが大きくなることがあります.このような現象を性格に把握する事を目的に,岐阜大学構内に地震計が設置されています.地下104m,地下46m,地表に設置された地震計により,地震動の観測を行っています.右の波形図は,2009年8月11日に駿河湾で発生した地震による観測記録です.地表付近で地震動が4~5倍程度増幅していることがわかります.

全国の地震危険度評価とリスク評価

 わが国には多数の活断層があります.地震工学研究室では,政府の地震調査研究推進本部によって特定されたすべての活断層について,地震が発生した場合の揺れ(右の図)による影響評価を行っています.また全国のどこで起こるかわからない地震についても網羅的に評価しています.その結果とそれぞれの地震発生確率をあわせて,任意の都道府県や市町村を対象とした地震リスク評価を行うことができるようになっています.

ライフライン停止パターンとその影響評価

 私たちの暮らしは,電気・水道・ガスなどのライフラインによって支えられています.地震時に機能停止すると生活支障や社会経済活動の停滞が発生するので,将来の地震に対する防災対策を進めるためには,その予測が重要です.そこで,地理情報システム(GIS)を用いて兵庫県南部地震の被害記録を分析し,ライフライン機能停止予測とその影響予測を行うモデルを構築しました.右の図は,神戸市周辺における電気(E)・水道(W)・ガス(G)の地震後1ヶ月後停止パターン(1:供給,0:停止)を表しています.