地球科学研究室では,基礎科学である地質学を活用して大規模地質災害の低減と地熱資源評価を進めています.過去に地すべりや地震が発生した記録がない地域であっても,遠い過去には大規模地質災害が起きていたかもしれません.そのような記録は地層や岩石に残されています.その記録を読み解くことによって,地震を引き起こした活断層の動きや大規模地すべりの特徴を見いだすことができます.このように人間の一生をはるかに超える長大なタイムスケールで過去に起こったできごとを理解することにより,今後予想される大規模地質災害の予測につなげ,その被害を低減させることを目指しています.また,地下には地質災害の記録のほかに,資源が隠れていることがあります.地下浅層の熱を利用する地中熱利用は今後の発展が見込まれる自然エネルギーであり,地下の状況の理解を進めることによって利用可能な資源量の評価手法の開発を進めています.このような観点から進めている最近の研究を以下に紹介します.
岐阜県には日本有数の規模の活断層がいくつも分布しており,1891年には根尾谷断層が活動して濃尾地震が発生しました.このような活断層の活動履歴の評価はこれまで新しい地層を対象として行われていますが,古い岩石の中に断層破砕帯が発達している場合であっても適用可能な新しい活動履歴評価手法の開発を進めています.(写真1:根尾谷断層の調査.右側の暗い色の地層に濃尾地震の痕跡がどのように残されているのか調べています.)
急峻な地形からなる造山帯では,斜面災害が頻発し,その減災が重要な課題です.岐阜県は,県土の大部分が山地からなるため,斜面防災が重要な課題であり,またその好フィールドでもあります.どのような地質学的・地形学的特徴の場で斜面災害は発生するのか,その前兆現象にはどのようなものがあるのかを,大規模斜面崩壊・長期的予測をキーワードに研究を進めています.(写真2:岐阜-福井県境のチャートの崩壊地(左上),能郷白山の山向き小崖:地すべりの前兆現象(左下),根尾白谷の滑落崖:上部は石灰岩,下部は玄武岩(右上),約6000年前の地すべりダム堆積物の掘削(右下))
これまでの地中熱利用の研究を通して,岐阜市のような扇状地地域では地下水が豊富であるため地中熱利用に特に適していることがわかってきました.そこで今後の普及の前に地下情報の整備を行い,円滑に普及が進んでいくことを目指しています.(写真3:地下情報に基づく導入可能性評価の例)