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研究最前線(2011年12月掲載)

地下水と上手く付き合った社会づくりのために

准教授 神谷浩二(地盤工学・地下水工学)
社会基盤施設設計学研究室

研究概要

 水循環系の一部である地盤内の「水」は,人間活動に対して飲用水などの資源として恩恵を与える一方で,地盤沈下や斜面崩壊などの地盤災害の原因になるという二面性があります.本研究室では,下記で紹介するように,地表近くの不飽和状態(土粒子と水・空気の三相)から深部の飽和状態(土粒子と水)の範囲の地盤を対象にして,地下にある水の挙動とその役割に着目した研究を行っています.これによって,今後の地下水との上手な付き合い方を見出し,水資源の保全や地盤災害の抑制などに貢献することを目指しています.

地下水資源の管理に関する研究

岐阜県の特に濃尾平野は,生活・工業・農業用水等の水源の多くを地下水(飽和地盤の水)に依存した特長ある地域です.この地域の貴重な水資源を将来にわたり確保して安定的に利用するには,地下水の管理手法・体制を構築することが重要です.そのため,自治体・企業等との連携による「岐阜地下水環境研究会」を2003年に発足させて,蓄積されている地下水利用のノウハウの整理を行うとともに,地下水の流動や水質等の調査・分析による実態の把握,地下水の量や質の将来の予測技術の開発を進めています.
(写真上:既設井戸を利用した地下水調査,写真左下:地下水流動の調査結果の例,写真右下:地下水質(カルシウムイオン)の調査結果の例)

不飽和な土構造物の安全性に関する研究(河川堤防を例に)

 近年の局所的豪雨の多発によって洪水災害のリスクが増大していて,河川堤防の防災構造物としての重要性がさらに高まっています.堤防の安全性向上に寄与すべく,不飽和地盤の浸透問題として次の二つの視点による研究を進めています.1:降雨や河川水の浸透による堤防の不安定化の防止に関して,従来の安全性の評価法に不飽和地盤内部の空気の作用を新たに導入する研究を進めています.そのため,内部の空気の挙動を実験等に基づいて分析して水の挙動との関連性などを究明しています.2:河川水が堤防を越える場合に,堤防地盤の侵食等を抑制して抵抗力を高める新たな課題に取り組んでいます.
(模型地盤の降雨浸透実験装置(写真左)と土質材料の透気試験システム(写真右))