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研究最前線(2014年8月掲載)

流域における水・物質動態の解明とこれを活用した流域環境創造戦略の提案

教授・篠田成郎(水文学・水環境工学)
准教授・児島利治(流出解析・リモートセンシング)
助教・大橋慶介(河川工学・土砂水理学)

流域水文学研究室

研究概要

 人間活動と自然環境との関わりのしくみを解明し、社会システムまで含めた良好な環境を創造するための具体的な環境戦略を提案することを研究室のメインテーマとしています。このため、人間生活にとって最も身近な流域というスケールを対象として、現地観測、GIS(地理情報システム)、数理モデル構築、数値シミュレーションなどを通じて、流域内の様々な人間活動や地球温暖化・気候変動などが、水やその他の物質の動きにどのようなインパクトを与えるのか、またこうしたインパクトをどのように制御することが効果的か、さらに経済性との両立や地域の文化・風土との調和をどのように図り、地域活性化に繋げることができるのかについて研究しています。

森・川の恵みを活かした地域社会システムの創造

 木材供給だけでなく、CO2吸収、洪水・土砂流出や斜面崩壊の抑制、豊富な河川流の維持、多様な生物の生息域など、森や川からは様々な恵みがもたらされます。自然環境の中での森や川の役割を現地観測、人工衛星画像の解析、流域機能や土砂流出のモデル化などから調べることを通じて、これらの恵みを地域の資源・財産と捉え、地域活性化を図る持続可能な社会システムの在り方を検討しています。

(写真:現地観測の様子)

森林の水源涵養機能評価に関する研究

 森林は、降った雨を即座に流さず、暫くの間貯留してゆっくり流すことによって雨が降っていないときの川の流れを維持したり、大雨の時の川の水を減らして洪水を防いだりする機能を持っています。森林の持つこの機能は、日本では「緑のダム」として一般に認知されています。森林の緑のダム機能は、降水が樹冠に遮られ損失する「樹冠遮断」、森林の表土層中をゆっくり流下する「中間流」、表土層よりさらに深い地下水層への「浸透」等の複雑な水の流れの組み合わせで成り立っており、どのような森林・地質・地形で、どのような気象条件であれば、どの程度洪水・渇水を減災する機能があるかまだよく分かっていません。様々な水文過程の現地調査と水文モデル、衛星データの解析により、緑のダム機能の評価に関する研究を進めています。

(写真:森林内での水の流れ)

岐阜市市街地を流れる長良川から地下へ浸透する流量の解明

 川や地中を流れる水の量を計測することは、科学や工学にとって基本的な事柄ですので簡単に思うかもしれませんが、実際はそれほど単純ではありません。通常は、ボートを浮かべて計った流速と、地形測量によって計った断面積の積として流量を求めます。ところが、この方法では詳細な流量を知ることはできません。そこで、私たちはADCPと呼ばれる超音波流速計によって、複数地点で河川流量[m3/s]を詳細に求めました。その流量差が地下浸透量になるわけです。その結果、長良川の水が比較的少ないときでも、千鳥橋から忠節橋の間で、毎秒約10トンの水が地下へ浸透していることが分かりました。図は忠節橋の流速分布で、北岸寄りに大きい流速を示しています。

(写真:忠節橋での流速分布(右岸つまり北側寄りに大きな流速を示しています))