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研究最前線(2021年2月掲載・河川・水文学研究室)

平地や山地に降った水のゆくえと川の流れについて考える

准教授・児島利治(水文学)

助教・大橋慶介(河川学)

河川・水文学研究室

研究概要

 地球上のあらゆる水に関する学問を水文学と呼びます.対象とする範囲を狭めると,陸上の水に関する学問は陸水学,河川に関する学問は河川学,森林の水に関する学問は森林水文学と呼ばれます.本研究室では,河川学~河川水文学,森林水文学を研究領域とし,特に森林から河川を中心に,水の動きとそれに伴う土砂・物質の動きによって生じる課題解決やそのための技術開発をしています.近年は地球温暖化による豪雨災害が頻発しており,防災の役割が以前に増して重要になっています.研究活動は野外観測/測量とコンピューターシミュレーションが中心になります.

間伐や伐採による森林生態系サービスの変化

 森林が人間社会に与える恩恵を森林生態系サービス(Ecological Service)と呼びます.森林生態系サービスは,木材の供給サービスだけではなく,気候変動の緩和,洪水の緩和等の調整サービスや,生物多様性などの基盤サービス,景観やレクリエーション等の文化サービスがあります.人工林を伐採したり植樹することによってこられのサービスは変化します.例えば,良い樹木を育成するには,間引き(間伐)することが必要ですが,樹木の本数が減少することによって豪雨時に樹木が遮る雨水が減少し,洪水流量が増加する場合があります.このように,間伐や伐採,植樹などの森林管理によって変化する森林の恩恵を評価し,どのような管理方法が良いか考える研究を行っています.

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図.スギの成長モデル(林齢に対する樹木の高さ)

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図.樹木の間引き(間伐)と成長によって変化する河川流量

 

深層学習を用いた気象・水文観測データの補間と補正

 降雨量,降雪量,気温,河川水位などの気象・水文観測データは,観測機器のトラブル等により,観測できないこと(欠測)が度々発生します.気象・水文データは連続して観測されていることが重要です.例えば年間降雨量も,観測されていない期間があると積算することができなくなるため,欠測期間は"それらしい"値で埋める(補間)することが必要です.気象・水文観測の各項目は相互に関連性があるため,他の観測項目のデータがあればある程度の推定が可能です.気象・水文観測項目間の関連性は非常に複雑であり,天気予報に用いられる気象モデルはそれらの関連性を科学的に定式化していますが,全ての事象が分かっているわけではありません.近年流行している深層学習は,それらの関連性をブラックボックス的に推定できる便利なツールです.

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図.深層学習(再帰型ニューラルネットワーク; RNN)の概念図


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図.深層学習で補正した河川流量データ

岐阜市長良川鵜飼観覧を安全に運行するための最適な河川形状の探査

 岐阜の代名詞でもある鵜飼ですが,河川は毎年洪水によって形を変えるので,安定して観覧船を運行するには,河川工事が欠かせません.環境負荷やコスト削減のためには効率手な整備が望まれるので,河川シミュレーションとAIを利用して最適な河川形状を決める研究をしています.

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図.洪水時の河川地形の変化(上図)と河原の石礫の平均サイズの変化(下図)