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研究最前線(2021年2月掲載・水系動態研究室)

流域圏の大気・降水・河川の仕組みを解明し社会に応用する

教授・玉川一郎(気象学,水文気象学)

准教授 原田守啓(河川工学,土砂水理学,応用生態工学)

水系動態研究室

研究概要

 山岳から河口に至る水の流れでつながっている『流域圏』全体を対象に、降水・蒸発散から河川における流れまでの「水とそれに関わるものの動態」について、水文気象学(担当:玉川)、河川工学(担当:原田)の両面から、現象の解明と実際への応用に関する研究を進めています。

【水文気象分野】大気と陸面の間では、エネルギーや水などの物質が交換されています。それを運ぶ大気の乱流、降水現象、地面や植物での交換過程等を対象に、データ解析や数値計算、実験、観測などを使って研究していきます。また、レーザー・音波・赤外線などを用いて、風、雨、熱といったさまざまな現象の観測技術を開発しています。

【河川工学分野】『いい川』を実現するためには、川が本来持つダイナミクスや川の個性を科学的に理解することが大切です。流域の気候・地形地質が形づくる川の特徴、上流から下流への水と土砂の動きなどについて、現地調査、水理実験、数値計算、GIS解析などを組み合わせて研究しています。気候変動の影響と適応策や、地球温暖化が河川生態系に及ぼす影響についての共同研究プロジェクトも進めています。

光の伝搬に影響を与える大気乱流の解析

 大気と地表面との間で、熱や水蒸気、あるいは運動量を交換するのは、乱流と呼ばれる大気中の渦です。この乱流に関わるサイエンスは、古典的な流体力学のテーマとして、特に平均的な状態については良く研究されてきましたが、近年、レーザー光を使った高速大容量通信や宇宙太陽光発電でのエネルギー伝送などでの利用を考え、より詳細な把握と予測が必要とされています。

本研究室では、現在、これに応えるために、大気乱流の高度な観測に基づいて、気象学における既存の理論を拡張し、実用に耐えるレベルの乱流の理解とその予測法を確立することを目指して、企業や学内外の研究者の方たちと共同研究を進めています。

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川の個性、河川の区間ごとの地形や生息場の特徴を科学的に解明し河川の管理に活かす

 日本は世界的に見ても降水量が多く、地形も急峻なために、土砂災害と洪水が多く発生します。しかも気候変動(地球温暖化)によって極端な大雨や渇水は増加する傾向にあります。川には水が流れているだけでなく、山から運ばれてきた土砂が形作る様々な河川の地形が、動植物に多様な生息場所(ハビタット)を提供しています。本研究室では、水と土砂の流れの力学(土砂水理学)をツールとして、河川生態学や地形学など様々な分野の研究者や行政・企業との共同研究を通じて、災害から人の暮らしを守りながら、河川環境を豊かにしていくために「治水と環境」を両立した次世代の河川技術を開発しています。

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