2025年9月24日
◇論文題目:豪雨災害時の住民避難行動における「避難しなかった」と「避難できなかった」の比較(伊藤可依都,髙木朗義)
日本国内では,大規模な豪雨災害が頻発し,各地で人的被害が発生している.今後,これらの被害を減少させるためには,非避難者の行動改善を図る必要があり,行動要因の知見を得ることの価値は高い.先行研究では,「避難しなかった」と「避難できなかった」という,異なる状況に置かれた避難行動を,明示的に区分せずに分析していた.本研究では,クロス集計分析を通して,非避難行動の特性の違いを詳細に明らかにした.特に,災害や避難に関する情報認知と自宅の被災リスクの見積を示す特徴量において,避難しなかった人と避難できなかった人は,対照的な選択傾向が見られ,「避難しなかった」と「避難できなかった」という行動には,異なる理由で避難行動を行わなかった可能性があることを考察した.そのため,単に住民を一括りにして,防災対策を行っていくのではなく,それぞれが持つ情報取得環境やリスク認識に合わせた対策を行っていく必要があることを示した.