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研究最前線(2021年3月掲載・モビリティアナリティクス研究室)

交通ビッグデータを駆使し移動をプロデュース

教授・倉内文孝(交通工学,交通計画)

モビリティアナリティクス研究室

研究概要

 情報通信技術やAIなどの先端技術や人の流れ,土地や施設の利用状況などのビッグデータを活用し,エネルギーや交通,行政サービスなどの社会基盤を効率的に管理・運用するスマートシティ構想が立ち上げられ,様々な地域で実証実験が進められています.このようなスマートシティの実現には,豊富に収集される交通ビッグデータを解析し,移動ニーズに対応した最適なモビリティサービスをデザインする必要があります.

本研究室は,2021年4月より研究室名を交通システムデザインからモビリティアナリティクスへ変更しました.最適な交通システムを「デザイン」することだけでなく,交通ビッグデータを駆使し,迫りくる交通革命に対応したモビリティサービスをデザインし移動をプロデュースすることをめざし,そのための方法論を考究しています.

Wi-Fiセンシングデータを活用した人的流動モニタリング

 スマートシティ構想の一環として,都市内に複数のWi-Fiパケットセンサーを設置することで人的流動のリアルタイム観測を試行しています.収集されたデータを活用し,例えばまちづくりイベントを実施したときの人の流れの変化を検証したり,人の訪問順序などの理解を深めたりすることで,まちの活性化につながる移動のプロデュースを目指しています.

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図1.岐阜市内における滞留状況の時間変化(左:2020/11/08【通常時】,右:2020/11/15【柳ケ瀬パークライン,サンデービルヂングマーケット実施時】)(画像クリックで動画再生されます)

高速道路におけるProactive型交通マネジメント手法の開発

 高速道路は,我が国にとって物資や人の移動のための重要な社会基盤施設ですが,現在でも慢性的に交通渋滞が発生したり,交通事故が多発したりするなど十分な機能を実現できていない区間も存在します.また,高度経済成長期に建設された構造物は本格的な更新時期を迎えており,早急な対応が求められます.このような状況に対し,高速道路利用者に自発的に時間調整やう回などの行動変更を行っていただく交通マネジメント手法の開発を目指しています.具体的には,ゲーミフィケーション手法を援用し,ゲーム感覚でミッションを達成することで楽しく行動変容を実現できるようなしくみの構築をめざしています.

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図2.Proactive型交通マネジメントの概念図

Network Topology理論を用いた社会構造変化の理解

 本格的な人口減少社会を迎え,特に過疎地域では平常時のサービス効率化のための市町村合併や施設集約などが進んでいます.その結果,人々は日常生活において交通サービスに依存する程度がより大きくなり,ひとたび災害が発生し道路網が被災すると,集落が孤立してしまうなど社会脆弱性を増大させている懸念があります.このような社会状況変化による災害時の社会の持続可能性評価を行うために,ネットワークの形状論(Network Topology理論)とマルチエージェントシミュレーションを組み合わせた方法論の構築を行っています.

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図3.Network Topology理論を用いた社会構造変化の表現