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社会基盤工学科環境コース 出村嘉史准教授が「令和元年度 土木学会論文賞」を受賞しました

令和2年6月12日(金)に開催された土木学会の令和2年度定時総会(通算第106回)において、出村嘉史准教授(社会基盤工学科環境コース)他が「令和元年度 土木学会論文賞」を受賞しました。

 

論文賞

木曽川支派川改修と土地改良―近代水系基盤形成のための連携構築プロセス―

土木学会論文集D2(土木史)、Vo.73, No.1, pp.54‐62,2017.

出村嘉史(岐阜大学)

 

授賞理由

本論文は、近代の木曽川上流支派川改修事業を対象として、広大なエリアにおける水収支のシステムが成立した経緯を、変遷する制度と関係した諸立場の働きから解明している。これまで明らかにされていなかった多岐に亘る歴史的事実の実証を丹念に行い、その後全国の中小河川改修事業へとつながった画期的な「支派川改修事業」の成立経緯を含めて、広範な地域における土地利用が総体として近代化する過程が鮮やかに描かれている。

この論文の独自性は、土地改良と河川改修という、現在では別の部門として扱われている2極の巨大プロジェクトを対等に並列させてその関連に着目していることであり、多層的であるが故にこれまで断片的にしか見えていなかった事象の全体像を描くことに成功している点である。その視野により、国(食糧増産を果たしたい農林省と包括的な河川管理を実現したい内務省)・県・組合など、複雑に絡む諸立場が整理され、輪中に起因する利己的な個別社会から、全域を視野にいれた連合的体制へ、互いに調整されていく過程が示された。同時に当初の合理的なプランが、時間をかけた協調の努力を経て、現実的で無理のない計画へ転換された経緯、すなわち多主体の間で制度が均衡へ至る枠組みが実証的に示されている。

このように本論文は、史実の解明のみならず今後の計画全般に対して豊かな情報を提供するものとして学術的貢献は極めて高く、論文賞に相応しいと認められた。

 

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